爽快爺さんの投稿小説

世之助 男色回顧録

(104) 

2024/04/22



次の週に出勤した時、定時前に橋本次長が席に来た。

「橘君、都合はどうかね。」

与之助はアパートに誘われていることが分かった。

飯田部長が世之助を誘うときはいつも金曜日の定時前に電話をしてきて小

声でささやいた。

「橘君、建設の飯田だ、

都合が付けば金曜日の夜か土曜日にマンションに来て泊まってくれ」

と言うものだった。

だが、橋本次長は結婚しているから時間の自由がないので風俗営業の宿泊

アパートで数時間を一緒に過ごしたいと言う誘いだ。

与之助は飯田部長と過ごした楽しい余韻があったので、誘いに乗り気では

なかった。

次長は熱心に誘った。

「今日は家内が友達と女子会の夕食で遅く帰ってくるんだ。

いつもより時間がとれるので都合が付かないかなあ。」

与之助は部長のマンションで夜を過ごすときは心から満足を感じたけれど

橋本次長ではそれほど満足感が無かったので思案していた。

 

次長がよく与之助の所にやってきていたので周りの人達は次長が世之助に

何の話が有るのかとおもっているようで、チラッと視線を向けることがあ

った。

「ところで、橘君は気が付いたかねぇ。

この前、アパートの廊下を通る真澄主任の声が聞こえたんだ。

真澄主任もあのアパートを利用しているんだね。

わからんもんだねぇ」

与之助は長話は困るので次長の誘いを受けた。

「それではいつもの時間に・・・」

「あぁ、承知してくれるのか。ありがとう」

次長は与之助の席から嬉しそうに立ち去っていった。

 

次長がアパートの受付で部屋の申込をしていた時、真澄主任がアパートの

入り口に入ってきた。

お互い顔を見合わせてびっくりした。

「あっ、次長と橘君がこれから・・・」

真澄主任はドギマギして慌てて言った。

次長の所にやって来て、頭を深く下げた。

「次長、いい機会にお会いしました。

こんなことを言って厚かましいのですが、御願いがございます。

次長と昔、一緒に過ごして以来、私を誘ってくださったことがないです。

次長はその時、私が上手だといってとても満足して下さいました。

必ず満足していただきます。

もう一度、私に機会を与えてください。

御願いします」

 

                           (つづく)






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