丹生鳥野さんの投稿小説

宇宙の意識

(7) 

2024/04/22



次田の話に上保が混ぜっ返した。

「まるで禅問答だね。

悟りを開けば無が分かるのか。」」

次田がその通りだと言う気持ちになって続けた。

「近代物理学の量子論では。

『無』から『有』が生れ、『有』から『無』が生まれる。

『有』イコール『無』だ。

仏教思想に似ているとおもわないか。

『色即是空』『空即是色』だよ。

 

それで量子論と仏教思想が酷似しているので、外国の素粒子物理学の研究

者を調べてみたら、やっぱり仏教に詳しい人達がかなりいた。

先日読んだ雑誌に日本の高僧と量子物理学者の対談が載っていた。

お二人が会談で盛り上がっていたんだ。」

上保は説得されている気分になってきた。

「量子の世界では

(+1)プラス(-1)は ノット イコール(0)のようなんだ。

ゼロだったりゼロで無かったりする揺らぎがあって、この揺らぎ理論から

沢山の宇宙があるというマルチ宇宙というのが理論的に導かれるそうなん

だ。

けれど、他の宇宙からの情報が発信されないから我々は知る方法がないと

いうんた。

だけど僕のテレパシーの話のように勝手な思い込みだけれど、何かが発信

されているのじゃないかなあと思うし、思いたいんだ」

上保は話に付いていけないようになってきた。

 

「上保君はアーサー・クラーク原作の『2001年 宇宙の旅』という映画を

みたかい。

あの映画の中でモノリスという黒い長方形の物体がドンと現れる場面が何

回かあったただろう。

モノリスが現れるたびに宇宙からの何かのメッセージが人類に伝えられて

人類が進化したように描かれていたように思うんだ。

僕は『宇宙に意志』があるように思うんだ。

SFドラマの宇宙大戦争の話ではなく、宇宙が穏やかに成長するように何者

かが我々に宇宙の意志を伝えてきているように思うんだ。

 

人間にテレパシー能力が無くなったように、人間は何かの信号を受け取れ

なくなっているのではないかとおもう。」

上保はなんだか煙に巻き込まれたような気持ちになってきた。

 

「アインシュタインの一般相対性理論は光速より早いものは存在しないと

言うことになっている。

ところが情報伝達では『ベルの不等式』と言うのがあって、また量子の話

に戻るけれど、二つの量子が絡み合った状態、これを量子もつれと言うん

だけれど、二つの量子を無限遠に遠ざけて、一方の量子に働きかれて、例

えば、プラスだったものをマイナスにすると、無限遠の量子がそれに反応

して変化することが精密実験で確認されたんだ。

だから情報は光速よりはやく伝わることが実験で確認されている。

アインシュタインの光速が最高の速度だと言うのがやぶられた」

 

                       (最終回へつづく)






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