丹生鳥野さんの投稿小説

宇宙の意識

(5) 

2024/04/20



次田はリベットの実験結果の例について話し始めた。

「これを一目ぼれに当てはめると、君が『好きだ』と意識する前に0.2秒も

早く脳細胞が活動して『好きだ』という結論をだして、君のどこかに結論

を伝えているんだよ。

だから、『私』は意識する前の脳細胞の活動に操られている事になる。」

上保は次田の話から自分が結論を出す前に脳細胞が結論をだしているなら、

自分は脳細胞に操られているのではないかという気がしてきた。

「僕はひょっとしたら何かに操られているのかもしれない。

薄気味悪い話だねぇ。

昔の伝説でもキツネが乗り移ったという憑依の話があるだろう。

本当に何かが人をコントロールしているのかもしれない。

話がオカルトじみてきたね。」

 

「またまた、話が飛ぶんだけれど」

次田がまた話題を変えた。

「映画にもなったスタニフワム・レムの『ソラリスの陽のもとに』という

科学小説を読んだことがあるかい、。

ある惑星を覆う海のような得体の知れない何かが存在していて、集団的な

意志を持っているんだ。

それで、宇宙船で惑星に来た飛行士に影響を与えるために宇宙船に飛行士

の恋人が現れるんだけれど、得体のしれないソラリスが飛行士の心の中を

読んで作り出したものなんだ。

僕は脳の活動を小説のソラリスの何か未知の存在と類似の現象のように感

じてしまう。

現在、宇宙のどこかに生命体がいるかどうかロケットを打ち上げて探索し

ているよね。

しかし、マルチ宇宙という理論があって、多数の宇宙があって我々の宇宙

はそのうちの一つの宇宙だという理論なんだ。

しかし、たとえそのような沢山の宇宙が存在してもそれらの宇宙から情報

が漏れ出さないから我々は全く知ることができないと言うんだ。

テレパシーと関係があるかどうか知らないが、ソラリスに出てくる未知の

存在がもし別次元に存在して、何の目的か分からないけれど人類に影響を

与える為に情報を送っているということがありうると考えるのもおもしろ

い考えだとおもう。」

上保は次田の別次元の話から触発されて読書で得た知識を披露した

「現代の宇宙論を研究している学者は数学的に宇宙を11次元で成り立って

いるという仮説を立てている。

我々は前・横・上の3次元と時間経過という1次元を加えて4つの次元で全

ての現象が表せると考えている。

けれど、11マイナス4で残りの7次元はもし存在していても我々には感知出

来ない。

現代は新しい概念で研究が進んで色々な仮説が検討されているけれど、と

てもじゃないが理解を越えているよ」

 

                           (つづく)






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