秋山槙太郎さんの投稿小説

男曼荼羅/男の世界

 (370) 小石川の切腹の稽古-1 

2024/04/19



二人が目を覚ましたのは、、9時前だった。

今朝の、、夜明け前の射精、、重雄は初体験だったが、それは十分過ぎる

ほどの快感だった。二度寝入りをした二人はゆったりとした気分だった。

 

重雄は署長の小石川の体に抱きついている、、小石川も重雄を包み込むよ

うに抱きしめていたのだ。

二人は素っ裸のままだった、、。目を覚ました小石川は、まだ寝ている重

雄をじっと見つめている。その重雄が目を覚ました。二人の目があったの

だ。

 

「ふふふ、、重雄、、」

「署長、、」重雄は甘えるように小石川に抱きついてきた。

「俺とキスするか?」

「はい、、」二人は唇を合わせてきた、、長いキス、、、

 

小石川は時計を見た。

「おっ、もうこんな時間か、、重雄、俺はこれからやらなければならない

ことがあるんだ」

小石川は起き上がり、箪笥の中から真っ白な越中褌を取り出すと、顔を引

きしめて褌を締めてきたのだ。

重雄は、これから署長がやることって、いったいなんだろうと思ったのだ。

 

「お前、まだゆっくりと寝てもいいんだぞ。俺は、毎朝、切腹の稽古をし

ているんだ。今から切腹の稽古をやるから」

「えっ、切腹って、あの時代劇にあるような腹切りの、、切腹ですか?署

長が切腹の稽古をなさっているのですか?」

重雄は驚いたのだ。署長が、、今の時代に、、切腹の稽古をしているとは

思ってもみなかった。

 

しかし、重雄はよく考えてみると、署長の小石川と切腹、、それは何かピ

ッタリのような、、ごくごく自然な感じがしたのだ。

でも、、何の為に切腹の稽古を?、、という思いがあった。

 

「ああそうだよ、その腹切りだ、切腹だよ。俺は毎朝、起きたら切腹の稽

古をやっているんだ。わしらの仕事は、時代こそ違うが武士の仕事のよう

なものだ。だから、わしは仕事で失敗したら、いつでも腹を切るつもりで

いるんだよ。

男としてのケジメをつけるんだ。だから、いつでも腹を切れるように、朝

はいつも切腹の稽古をしているんだ」

そう言った小石川は、今までにないほどに顔が引き締まっていた。

 

「そうなんですか、、」

重雄は、切腹と聞くと、股間がキュンとしてきたのだ。

昔、遠い昔、映画館で見た時代劇の映画、、、東映映画の時代劇で切腹の

シーンになると、、まだ精通していないのに、、毛の生えていないチンポ

がムクムクとしてきたのを思い出したのだ。

 

切腹という言葉は、重雄にとっては高潔で高尚な、、武士の潔さ、、そし

て何よりも『大人の男』を連想させるものだった。それは、時代劇の中で

着物の裾からチラチラ見えた真っ白な褌と連動するようなものだった。

 

切腹と桜と越中褌、、真っ白な白装束の羽織袴を着て、、腹を切る、、着

物を開きふっくらとした腹を剥き出しにして、、刀の刃を当ててくる、武

士の痛みに耐える厳しい顔、溢れてくる真っ赤な血、、、そんなシーンを

思い出したのだ。

 

「署長、、わし、、署長の稽古を見せていただけないでしょうか、、」重

雄の真剣な顔で小石川にお願いをしたのだ。

「重雄、お前、俺の切腹の稽古を見たいのか」

「はい、見たいです、、署長の切腹を、、」

重雄は見たいのだ、、敬愛する署長の小石川のやる切腹の稽古を、、重雄

は、小石川から『男』を感じているのだ、だから、是非とも見たいのだ。

 

「よし、わかった。お前に見せてやろう。じゃあ、、そうだな、、新しい

越中褌があるから、それを締めろ」

「はい、ありがとうございます」重雄は深々と頭を下げたのだ。

 

越中褌だけの姿の二人は、一番奥にある部屋に向かった。そこは広さ八畳

の座敷、、畳の間、そこは他の部屋とは全く違った雰囲気だった。

 

部屋の中が凛とした緊張感が漂っていたのだ。

床の間には、、「武士道」の文字の掛軸、、刀懸けには、大小二刀の模造

の刀、その横には三宝(さんぼう=鏡餅などのお供え物をお祀りする台の

こと)の上には、真っ白の和紙の上に短刀が置かれてあった。

短刀は白木の柄(え)の模造品だった。その短刀から出てくる妖しいまで

の鈍い輝き、、。

 

部屋の真ん中には四畳半ほどの大きさの白い敷物が敷かれてあった。

それは、、切腹を行うための場所、、武士が最後の花道を歩いていく部屋

、、切腹を果たす場所だった。

 

署長の小石川は、部屋に入ると表情が一変した。それは厳しいまでの武士

の表情、、切腹をして全てを昇華させていく顔、、その小石川の顔を見た

重雄は、股間がキュンとしてきたのだ。

 

(こんな顔の署長を見たのは初めてだ、、なんと男らしい姿、、なんか、

、、わし、、不謹慎だけど、、チンボが勃ってきそうだよ、、署長、署長

、、、)

 

重雄は、、キュンとしたような思い、、署長への思いが高まってきたのだ。

 

重雄は部屋の片隅に正座した。

署長のする切腹の稽古の邪魔にならないように、稽古の支障にならないよ

うに、身をひそめるように座って、署長の切腹の稽古を見るのだ。

真っ白の越中褌ひとつの署長は、四畳半の敷物の真ん中に座った。目の前

の三宝の台の中に、、短刀が置かれている、、

 

「重雄、これから俺は切腹をする、よく見ておけ」その凛と響く威厳のあ

る小石川の声、、。

「はい」

小石川の顔の表情、険しい表情が平静な表情に変わってきた、、それは全

てを達観したような顔だった。

全ての、、、死への達観、無常感全てを乗り越えていく、、自分の命を切

腹という武士の魂を昇華させていく、、、

 

ジッと正面を向いたままの小石川、、武士のような佇まい、、ふっくらと

した腹の左端をなぜてくる、、ここに短刀を当てて腹を切っていくのだ。

ジッと目を閉じてきた、、数秒、、、そして目をカッと見開いてきたのだ。

これから死へと赴く、、短刀の刃先を左の腹に当てると、、一気に短刀を

腹に、、、

「ううっ!、、」うめく小石川、、、短刀を腹に突き刺してきたのだ。

 

もちろん模造の短刀なので腹を切り裂くことはないが、小石川の、、、腹

に短刀を突き立てるその様は凄まじいものだった。

「ううっ、、、う、う、う、、、」

小石川の呻き声、、腹を切り裂く痛みに耐え抜くそのうめく声、、それは

真に迫るものがあった。

 

それを見ている重雄、、越中褌の中が勃ってきたのだ、、、『男』の最後

、、『切腹』という潔さ、、、その興奮が重雄を包んできたのだ。

目の前で、、必死の形相で腹を切り裂いていく小石川、、、それは悲壮な

ものでありながらも勇壮、、男としての極みのようなものだった。

 

小石川の腹切り、、左の腹から切り裂き、、右端まで切り裂いていく、、、

「う、う、う、、、、、」痛みに耐え顔を真っ赤にして、、小石川のうめ

く声が艶かしいほどだった。

 

最後に、、その短刀を腹から引き抜くと、、今度はその短刀を腹の上に当

ててきた、、そして、、腹の上から下へ、、切り裂いてきた、、それは『

十文字腹の切腹』だった。

 

稽古とはいえ、、小石川の切腹の稽古は、ただただすさまじく、、男のな

かの『男』の潔い切腹だった。

 

上司の切腹を見ながら重雄は、顔を真っ赤にして興奮していたのだ。

切腹の稽古を見たのは初めてであり、しかもその切腹をしたのは敬愛する

署長だっただけに、重雄は、、越中褌の中で、、自分の魔羅を勃ててしま

っていたのだ。

 

                            (続く)






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