しげ坊さんのエッセイ №380 

  

旅とことば

6.台湾(4)

2024/04/21



台北から高尾への新幹線の車内放送は北京語であった。

ところが、高尾の駅を出ると街の雰囲気がガラッと変わってみんな台湾語

を話している。

台湾語が分かるわけではないが、各国の言葉に非常に強い関心を持ってい

るので、人の話し声についつい耳をそばだててしまう。

北京語には濁音がないので、私にはフニャフニャとしか聞こえないが、台

湾語には濁音が有るのですぐに違いか分かる。

 

打合せ会議の昼の時間に台湾側の人達と話していたとき、日本語の上手な

担当課長が年輩のエンジニアを指さして「あの人は客家語
(はっかご)がで

きるんですよ」といった。

客家というのを知らなかったが台湾には漢族の人で台湾語、北京語、客家

語がてきる人達がいる。

 

ある日、いつものような熱烈歓迎の接待を受けた後、台湾の偉いさんがカ

ラオケに案内してくれた。

車で移動して、場末のような場所のカラオケに入った。

偉いさんは我々を部屋に入れて、「では、これで」と言ってスッと帰って

いった。

真っ暗に近い部屋の前壁にカラオケの歌詞が映し出され、普通の服装の若

い女の子が三人いて、日本人メンバーと日本の歌をうたった。

私は日本でも外国でもカラオケに一度も行ったことがないし、カラオケで

皆が歌う曲を全く知らないので、全くつまらなくて白け切っていた。

暫くすると三人の女の子がスッと居なくなって、出てきたときは二つだけ

を身に着けた超ビキニ姿だった。

そして、部長の膝に後ろ向きに跨って尻を着け、腰を揺らして下腹部を刺

激するようにして歌っていた。

私はつまらないから、「宴会で酔って気分が悪い」といって若い主任にホ

テルに送ってもらった。

残った二人がその後どうしたかは全然分からない。

 

「旅とことば」の主旨と全く違うが、昔、丸谷才一氏の小説「裏声で歌え

君が代」という小説を読んだ。

小説は日本在住の台湾人の下町の叔父さんが台湾独立運動の事などをネタ

に色々話す筋なのだが、読んだ当時は台湾について何も知らなかった。

台湾出張を機会に元台湾総統李登輝氏や他の旧日本人だった方々の著書な

どを読んだ。

彼らから受ける一番印象的なことは

「今の日本はどうなってしまったの」

「日本、がんばれ」というエールだ。

 

                            しげ坊






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